
「リチウムイオン電池を製造・輸入・販売したいけど、PSE対象になるの?」と疑問に思っていませんか?
結論から言うと、一定のエネルギー密度以上のリチウムイオン電池はPSE(電気用品安全法)の対象です。ただし、用途によっては対象から除外されるケースもあり、モバイルバッテリーとは異なる注意点もあります。
この記事では、リチウムイオン電池がPSE対象となる条件、対象から除外される用途、事業者に課される義務まで、公的資料をもとに解説します。
- リチウムイオン電池がPSE対象になる条件(エネルギー密度)
- PSE対象から除外される用途(自動車用・原付用・医療用・産業用)
- モバイルバッテリーとの違い
- 事業者に課される義務と表示のルール
- 対象判定を後回しにしてしまうよくある勘違い、名前が似ていて紛らわしいもの
リチウムイオン電池はPSE対象になる条件
電気用品安全法では、リチウムイオン蓄電池は「特定電気用品以外の電気用品」(341品目のうちの一つ)として規定されています。
対象となるのは、単電池1個あたりの体積エネルギー密度が400Wh/L(ワット時毎リットル)以上のものです。
この条件を満たすリチウムイオン電池は、ノートPCや電動工具、ドローン、電動アシスト自転車、モバイルバッテリーなど、さまざまな製品に組み込まれる、あるいは交換用パーツとして単体で販売される場合にPSE対象となります。

リチウムイオン電池のPSE対象から除外される用途
経済産業省の品目一覧では、リチウムイオン蓄電池について次のように定められています。
リチウムイオン蓄電池(単電池一個当たりの体積エネルギー密度が400Wh/L以上のものに限り、自動車用、原動機付自転車用、医療用機械器具用及び産業用機械器具用のものを除く。)
つまり、エネルギー密度の条件を満たしていても、用途によっては最初からPSEの対象外となるケースがあります。

自動車用・原動機付自転車用は対象外
自動車(EVなど)や原動機付自転車(原付・スクーターなど)に使用するリチウムイオン電池は、PSEの対象から除外されています。
用途の区分に迷う場合は、経済産業省へ確認することをおすすめします。
医療用機械器具用・産業用機械器具用も対象外
医療機器や産業用機械に組み込むリチウムイオン電池も、PSEの対象から除外されています。
なお、汎用性のある電池を産業用・非産業用の両方に使う場合は、明確に区分して流通させることが困難であれば、いずれの用途にもPSEマークを付すことが認められています。
「リチウムイオン電池だから一律にPSE対象」と思い込まず、まずは自社製品の用途がこの除外規定に当てはまらないかを確認しましょう。
PSE対象かどうかの基本的な調べ方については、以下の記事もあわせてご覧ください。

リチウムイオン電池とモバイルバッテリーとの違い

「モバイルバッテリー」も、電気用品安全法上はこのリチウムイオン蓄電池(品目341)に含まれる形で規制されています。2018年の通達改正は、既存のリチウムイオン蓄電池の規定に「モバイルバッテリーも含まれる」ことを明確化したものです。
そのため、モバイルバッテリーとリチウムイオン電池単体(交換用バッテリーパックなど)は、基本的な義務内容(届出・技術基準適合確認・全数検査等)は共通しています。一方で、表示すべき定格の考え方には違いがあります。
モバイルバッテリーは内蔵電池の電圧ではなく「出力電圧」を表示する必要がありますが、単体のリチウムイオン電池パックの場合は、電池自体の定格電圧・定格容量を表示するのが一般的です。
リチウムイオン電池の製造・輸入事業者に課される義務
リチウムイオン電池(品目341)を製造・輸入する事業者には、以下の義務があります。
| 義務 | 内容 |
| 事業届出 | 事業開始から30日以内に届出(法3条・5条) |
| 技術基準への適合確認 | リチウムイオン蓄電池の技術基準(技術基準解釈別表第9または別表第12、JIS C8712:2015) |
| 全数検査・記録保存 | 定格電圧・外観の全数検査+3年間の検査記録保存(法8条2項) |
モバイルバッテリーと同様、「特定電気用品以外の電気用品」に分類されるため、登録検査機関による検査は法律上必須ではなく、事業者自身による技術基準適合確認が原則です(第三者検査機関への依頼も可能)。
なお、販売を目的としない試験用・調査用・展示用の電池については、届出は必要ですが技術基準適合の義務は課されません。
なお、2022年12月28日の技術基準改正(セルごとの電圧監視など基準の厳格化)により、経過措置期間(2年間)を経て2024年12月28日以降は新基準への適合が必須となっています。これから製造・輸入を始める場合は、旧基準ではなく新基準(別表第12)への適合を確認しましょう。
リチウムイオン電池の表示すべき事項
リチウムイオン電池には、丸形のPSEマークに加えて、届出事業者名、定格電圧、定格容量の表示が必要です。表示は本体の見やすい箇所に、容易に消えない方法(刻印やシールなど)で行います。
輸入品の場合、海外工場側で表示を行うケースもありますが、届出事業者名が正しく表示されているか、定格電圧・定格容量の表示に不足がないかを、日本側でも必ず確認しましょう。
表示方法の詳細については、以下の記事もあわせてご覧ください。

リチウムイオン電池のよくある勘違い|対象判定より先にラボ・費用を調べてしまう
リチウムイオン電池のPSE対応を検討する際、「まずは検査費用の見積もりを取ろう」と考える方は少なくありません。しかし、費用を確認する前に済ませておくべきなのが、自社製品が本当にPSE対象かどうか、対象だとして除外規定に当てはまらないかの確認です。
対象範囲の確認を後回しにしてしまうと、不要な検査費用を払ってしまったり、逆に対象外だと思い込んで必要な届出を見落としてしまったりするリスクがあります。

まずは対象・除外の判定を済ませてから、次のステップ(技術基準適合確認や検査の依頼)に進むことをおすすめします。
もう一つ、名前が似ているために混同しやすいものとして「リチウムイオンキャパシタ」があります。
経済産業省のFAQによると、リチウムイオンキャパシタは、正極と負極の両方でリチウムの酸化・還元反応を行うリチウムイオン蓄電池とは仕組みが異なり、PSEの対象となるリチウムイオン蓄電池には該当しません。
「リチウムイオン」という名前だけで対象と判断せず、電池の仕組みそのものを確認することが大切です。
リチウムイオン電池で実際に起きた事故事例
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)には、リチウムイオン電池を使用した製品の事故が数多く報告されています。
実際の事例を知ることで、対応の重要性を実感できます。
事故事例1:電動アシスト自転車用バッテリーの発火(2022年6月・愛知県)
電動アシスト自転車用バッテリー及び周辺を焼損する火災が発生しました(40歳代男性)。
バッテリー内部の湿気が、内蔵されたリチウムイオン電池セルのつなぎ目から浸入し、劣化等により内部ショートが生じて異常発熱し、発火したものと考えられます。
本件はリコール対象製品による事故でしたが、使用者が購入後にリコール情報を確認していなかったことが被害拡大につながりました。
事故事例2:ネット通販で購入したバッテリーパックの発火
ネット通販で購入した掃除機用バッテリーパックを充電中、バッテリーパック付近から出火し、周辺を焼損する事故が発生しました。制御基板が異常発熱して焼損したものと推定されていますが、基板の焼損が著しく、詳しい原因の特定はできませんでした。
輸入事業者は事故後に社告を実施していましたが、その後倒産し対応が終了しています。
事故が起きた際に事業者へ連絡が取れない、対応が受けられないというケースは、価格の安さだけで選んだ製品にありがちなリスクです。リコール情報の確認や、信頼できる販売元からの購入が、事故を防ぐ第一歩になります。
リチウムイオン電池のPSEに関するよくある質問
リチウムイオン電池のPSE対応について、よく寄せられる質問をまとめました。
- 電動工具用の交換バッテリーもPSE対象になりますか?
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家庭用・DIY用の電動工具に使うリチウムイオン電池で、単電池のエネルギー密度が400Wh/L以上であれば、産業用機械器具用に該当しない限りPSE対象となります。
- ドローン用のバッテリーはPSE対象ですか?
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ホビー用・個人用のドローンに使用するリチウムイオン電池は、自動車用・原付用・医療用・産業用のいずれにも該当しなければ、PSE対象となる可能性があります。個別の用途については、経済産業省の解釈例や窓口で確認することをおすすめします。
- 除外規定に当てはまるかどうか、自分で判断できない場合はどうすればいいですか?
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用途の区分に迷う場合は、自己判断せず経済産業省の相談窓口へ問い合わせることをおすすめします。誤った判断のまま販売を進めると、後から対応が必要になるリスクがあります。
- 修理サービスで電池を交換する場合や、中古品として電池単体を販売する場合も、PSE表示の確認は必要ですか?
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必要です。電気用品安全法上の「販売」は対価を受け取って電気用品を譲り渡す行為全般を指すため、修理サービスの一環での電池交換や、中古品としての販売も該当します。新品・中古、交換用かどうかにかかわらず、表示内容の確認が必要です。
まとめ
リチウムイオン電池は、単電池のエネルギー密度が400Wh/L以上であればPSE対象になりますが、自動車用・原動機付自転車用・医療用機械器具用・産業用機械器具用は明確に除外されています。また、名前は似ていてもリチウムイオンキャパシタは対象外であるなど、混同しやすいポイントもあります。
まずは自社製品の用途が除外規定に当てはまらないかを確認したうえで、届出・技術基準適合確認・表示内容の準備を進めましょう。
なお、弊社では対象範囲の判定から、届出・技術基準適合確認・表示内容の確認まで、まとめてサポートしています。何から始めればよいか分からない段階でも、お気軽にご相談ください。

対象範囲の判定から、届出・技術基準適合確認・表示内容の確認まで、分かりやすくご案内します。
