
「PSEマークを貼るには自主検査が必要」と調べてわかった。
でも「具体的に何をすればいいのか」がわからない、という声はよく聞きます。
結論から言うと、PSEの自主検査は「定められた方式で検査を行う」+「検査記録を作成して3年間保存する」の2つがセットです。
どちらが欠けても義務を果たしたことになりません。
本記事では、自主検査で何をするのか、検査記録に何を書けばいいのか、すぐ使えるテンプレートとやりがちなミスまで整理して解説します。
・PSE自主検査で何をする必要があるのか
・検査方式(特定/特定以外で何が違うか)
・検査記録に書くべき必須6項目
・すぐ使えるテンプレートの使い方
・やりがちなミスと防ぎ方
PSEマークの自主検査とは
PSEマークの自主検査とは、電気用品安全法に基づき、製造事業者または輸入事業者が自らの責任において、対象製品が技術基準に適合しているかどうかを確認する検査のことです。
自主検査は第三者機関による認証(適合性検査)とは異なり、事業者自身が検査を実施し、その結果を記録・保管する義務があります。
この記録は、事故発生時や行政からの求めがあった際に提出できるよう、原則として製造・輸入を終えてから一定期間保存する必要があります。
自主検査は「やった気になる」だけでは不十分です。法律上の義務として明確に定められているため、手順と記録を正しく残す必要があります。
自主検査は「検査の実施」+「記録の作成・3年保存」がセット
電気用品安全法では、届出事業者が電気用品を製造または輸入する場合、国が定めた検査方式で検査を実施し、検査記録を作成して検査日から3年間保存することが義務付けられています。
この3年保存は法律上の要件であり、保存していない場合は義務違反になります。
記録を作るだけでなく、必要なときに取り出せる状態で保管し続けることが求められます。
なぜ「記録保存」まで義務になっているのか
検査記録は、単に社内で保管するための書類ではありません。
市場で事故や不具合が発生した場合に、「どの製品を、いつ、どの方法で検査したのか」を証明する重要な資料になります。
行政から検査記録の提出を求められた際も、適切な記録を提示できなければ、自主検査を実施していたことを証明できません。
そのため、自主検査は「検査を実施すること」と「検査記録を保存すること」の両方を満たして初めて義務を履行したことになります。
PSE認証の全体フローの中での自主検査の位置づけ
自主検査は、PSE対応の流れの中で「届出→基準適合確認→自主検査→表示→販売」という順番に位置しています。
販売前に義務を果たす必要があるため、「売れてから後でやる」という考え方は通用しません。製造・輸入の段階で検査を完了させ、記録を揃えた上でPSEマークを表示する流れが正しい順序です。

自主検査は、製品の設計や仕様が確定したあとに実施する工程です。
設計変更が残っている段階で検査を行ってしまうと、その後の仕様変更によって再検査が必要になる場合があります。
そのため、多くの事業者では「設計確定→基準適合確認→自主検査→PSE表示→販売」という流れで進めています。
販売スケジュールが決まっている場合は、自主検査に必要な期間も考慮して準備を進めることが大切です。

自主検査が必要なのは誰か
自主検査の義務を負うのは、電気用品を製造または輸入する届出事業者です。
「販売のみ」の事業者には自主検査の義務はありませんが、PSEマークのない製品を仕入れてラベルを貼って販売することもできません。
自社ブランドでOEM販売する事業者は、輸入事業者として届出し、自主検査も行う必要があります。
海外メーカーや中国工場から「検査済み」「PSE対応済み」と説明を受けることがありますが、その資料だけで届出事業者の義務を果たしたことにはなりません。
日本国内で届出事業者となる輸入事業者には、自主検査の実施と検査記録の作成・保存が求められます。
工場が作成した検査レポートは参考資料として活用できますが、自社で必要事項を整理し、自主検査記録として保管することが重要です。

自主検査の検査内容について
自主検査の方法は自由に決められるわけではなく、製品区分によって国が定めた検査方式に従う必要があります。特定電気用品と特定以外で方式が異なるため、まず自分の製品がどちらに該当するかを確認してから進めましょう。

特定電気用品(菱形)の検査方式
特定電気用品の自主検査は、以下の3種類の中から製品の特性に応じた方式で行います。
| 検査方式 | 内容 |
| 製造工程検査 | 製造工程の各段階で基準に適合しているか確認する |
| 完成品検査 | 完成した製品を1個ずつ検査する |
| 試料検査 | ロットから一定数を抽出して検査する |
特定電気用品は、登録検査機関による適合性検査も別途必要です。自主検査はそれとは別の義務として課されており、どちらも省略できません。
特定以外の電気用品(丸形)の検査方式
特定以外の電気用品の検査方式は品目によって異なりますが、代表的な検査項目は以下の通りです。
| 検査項目 | 概要 | 主な使用機器 |
| 外観検査 | 構造・材質・仕様が基準に合っているか目視で確認 | 目視、定規、ノギス等 |
| 絶縁耐力検査 | 電気的絶縁の耐力を測定機器で確認 | 耐電圧試験器 |
| 通電検査 | 実際に電源を入れて動作・安全性を確認 | 電力計、温度計等 |
それぞれの検査には目的があります。
外観検査では、製品の外観だけでなく、構造や表示内容、部品の取り付け状態などが基準どおりかを確認します。
絶縁耐力検査では、充電部と人体が触れる部分との間に規定の電圧を加え、安全な絶縁性能が確保されているかを確認します。
通電検査では、実際に製品へ電源を投入し、正常に動作するか、異常発熱や異音、異臭などが発生しないかを確認します。
検査内容は製品によって異なるため、必要な項目を事前に確認したうえで実施することが重要です。
品目によっては外観検査のみでよいものと、絶縁耐力・通電検査も必要なものがあります。
施行規則(別表第三)で品目ごとの検査方式が定められているため、自分の製品に該当する品目を必ず確認してください。
中国工場に自主検査を依頼する場合、「外観検査・絶縁耐力検査・通電検査のそれぞれの結果と数値を記録した書類を作成してください」という形で具体的に指示を出す必要があります。
「検査済み」の証明書を受け取るだけでは、届出事業者としての自主検査記録にはなりません。
施行規則(別表第三)の見方
より正確な検査方式を確認したい場合は、電気用品安全法施行規則の別表第三を参照してください。
e-Govから確認できます。
→ 電気用品安全法施行規則(e-Gov)
品目名で対象の行を探し、「検査の方式」の欄に記載されている内容が、その製品で実施すべき自主検査の方式です。初めて確認する場合は、経産省の「自主検査」関連ページと合わせて読むと理解しやすくなります。
→自主検査(経済産業省)
別表第三には、電気用品ごとに実施すべき検査方式が定められています。
同じ家電製品でも、必要な検査項目が異なる場合があるため、「他社製品と同じ検査を行えば問題ない」と判断することはできません。
まずは自社製品の電気用品名を特定し、その品目に対応する検査方式を確認することが重要です。
中国工場へ自主検査を依頼するときのポイント
中国工場へ自主検査を依頼する場合は、「検査済み証明書をください」と伝えるだけでは十分ではありません。
届出事業者として必要になるのは、どの検査を実施したのか、どの基準で判定したのか、測定値はいくつだったのかが分かる記録です。
依頼時には、外観検査・絶縁耐力検査・通電検査など必要な検査項目ごとの結果を記載したレポートを作成してもらうよう伝えると、後から自主検査記録へ反映しやすくなります。
また、検査レポートが中国語のみの場合は、日本語で内容を整理した資料もあわせて保管しておくと、社内管理や行政対応がスムーズになります。
工場任せにするのではなく、届出事業者自身が必要な情報を確認しながら記録を整備することが重要です。
検査記録の作り方
検査記録は「何でもよい」のではなく、法律で定められた項目を必ず含める必要があります。様式は自由ですが、項目の抜けは義務違反になるため注意が必要です。
必須6項目チェックリスト
経産省が「検査記録に記載すべき事項」として定めている必須項目は以下の6つです。

この6項目が揃っていれば、書式・フォーマットは問われません。ExcelでもWordでも、手書きでも構いません。
コピペして使える検査記録テンプレート
以下は、すぐに使える検査記録の基本フォーマットです。社内でアレンジして活用してください。
PSE自主検査記録
| 項目 | 内容 |
| 品名 | |
| 型式区分 | |
| 構造・材質・性能の概要 | |
| 検査年月日 | |
| 検査場所 | |
| 検査実施者氏名 | |
| 検査数量 | |
| ロット番号(任意) |
検査方法・結果
| 検査項目 | 検査方法 | 基準値 | 測定値 | 合否 |
| 外観検査 | 目視確認 | 基準適合 | 合格・不合格 | |
| 絶縁耐力検査 | 耐電圧試験器使用 | 〇〇V以上 | 合格・不合格 | |
| 通電検査 | 通電動作確認 | 正常動作 | 合格・不合格 |
総合結果: 合格 ・ 不合格
備考:
記録作成日: 担当者署名:
この形式に自社製品の情報を追加して使用してください。検査項目の列は、施行規則の別表第三で確認した自社製品の必要項目に合わせて変更してください。
様式は自由(ただし必要事項は必須)
経産省は「検査記録に特に定められた様式はない」としており、各社が自由な様式で作成してよいとされています。ただし「様式が自由」であることと「必要事項を省略してよい」は別の話です。
6項目のうち一つでも欠けていると、記録として不十分と判断されるリスクがあります。社内でテンプレートを作成しておき、毎回同じ形式で記録することで、記載漏れを防ぎやすくなります。
電子保存の注意点
検査記録はExcelやGoogleスプレッドシート、クラウドストレージなどでの電子保存(電磁的記録)も認められています。
ただし、「必要に応じて直ちに表示(取り出し)できる状態」であることが求められます。以下のような状況は義務違反になりかねないため注意してください。
・クラウドに保存したまま担当者が退職してアクセスできなくなった
・ファイルを誤って削除してしまった
・パスワードを設定したまま引き継ぎができなかった
保存場所・アクセス権・バックアップ体制を整えておくことが重要です。
電子保存を行う場合は、ファイル名やフォルダ構成を統一しておくと、必要な記録をすぐに検索できます。
製品型式や検査日ごとに整理しておくことで、行政から提出を求められた場合にも迅速に対応しやすくなります。
また、クラウドストレージだけに依存せず、定期的にバックアップを取得しておくと、誤削除やシステム障害への備えにもなります。
自主検査に関するよくある落とし穴
自主検査の義務を「知っている」つもりでも、実際の運用でミスが起きやすいポイントがあります。
事前に把握しておきましょう。
「検査方式」が別表とズレている
自主検査は「製品を見て問題なければOK」という感覚でやってしまうと、法律で定められた検査方式と合っていない場合があります。
たとえば、絶縁耐力検査が必要な品目なのに外観検査のみで記録を残してしまうケースがあります。施行規則の別表第三で求められている検査項目を事前に確認し、それに沿って実施することが必要です。
中国工場から提供される検査レポートをそのまま「自主検査記録」として使うケースも注意が必要です。工場の検査レポートは自主検査の代替にはならず、届出事業者が自ら記録を作成する必要があります。
記録を作っていない・3年未満で廃棄している
「検査はした」という認識はあっても、記録を文書化していないケースが散見されます。自主検査は「実施した」だけでなく「記録を作成・保存した」ことが義務です。
検査日から3年間の保存が求められているため、3年が経過していない記録を誤って廃棄するケースも注意が必要です。保存期限の管理ルールを社内で明確にしておくことをおすすめします。
自主検査を飛ばしてPSEマークを表示している
届出事業者であっても、所要の義務を履行せずにPSEマークを表示することは禁止されています。自主検査は、PSEマーク表示のための必須要件の一つです。
「工場側がPSEを取得していると言っていた」という理由で自主検査を省略することもできません。届出事業者が自ら実施し、記録を残す義務は変わりません。
また、そもそも届出事業者以外はPSEマークを表示できないため、工場や代行業者が「PSEを取得した」と言っても、届出事業者名で正しく手続きが行われているかを必ず確認してください。
自主検査に関するよくある質問
自主検査の実務でよく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。
- 自主検査は誰がやる義務がありますか?
-
原則として、電気用品を「製造または輸入」する届出事業者が自主検査を行い、記録を作成・保存する義務を負います。販売のみの事業者は対象外ですが、PSEマークのない製品の販売もできません。
- 自主検査はいつ実施しますか?販売後でもいいですか?
-
販売後ではなく、製造・輸入の段階で実施するものです。経産省の手続フロー上も「製造・輸入→自主検査→表示→販売」の順番になっています。販売してから後でやるという考え方は義務の観点から正しくありません。
- 自主検査の「検査方法」は自由に決めていいですか?
-
自由ではありません。国が定めた検査方式(施行規則 別表第三)に従う必要があります。品目によって求められる検査項目が異なるため、自分の製品の電気用品名に該当する行を確認してから実施してください。
- 特定電気用品と特定以外で、自主検査は何が違いますか?
-
特定電気用品(菱形)は「製造工程検査・完成品検査・試料検査」のいずれかで実施します。特定以外(丸形)は品目に応じて外観・絶縁耐力・通電検査などを組み合わせます。なお、特定電気用品は自主検査に加えて登録検査機関による適合性検査も別途必要です。
- 自主検査の記録は、どんな内容を書けばいいですか?
-
必須6項目(①品名・型式区分・構造概要、②検査年月日・場所、③実施者氏名、④検査数量、⑤検査方法、⑥検査結果)を必ず含める必要があります。本記事のテンプレートをそのまま活用できます。
- 検査記録に「決まった様式」はありますか?
-
特に定められた様式はなく、各社が自由な書式で作成してよいとされています。ただし必須6項目は必ず含める必要があります。本記事内のテンプレートを参考にしてください。
- 検査記録は何年間保存が必要ですか?
-
検査を実施した日から3年間の保存が義務付けられています。3年が経過するまでは廃棄できません。電子保存でも紙でも可能ですが、必要なときに直ちに取り出せる状態を維持してください。
- 検査記録はExcelやクラウドなど「電子保存」でもいいですか?
-
可能です。電磁的記録(電子的な方法)での作成・保存が認められています。ただし「必要に応じて直ちに表示できる状態」が必要なため、アクセス権とバックアップ体制を整えておく必要があります。
- 自主検査は外部(工場・第三者)に委託できますか?
-
自主検査の外部委託については、経産省から関連資料(PDF)が案内されています。委託を検討する場合は、まず経産省の一次情報で可否・留意点を確認してください。なお、委託した場合でも検査記録の作成・保存義務は届出事業者側に残ります。
- 自主検査が終わったら、PSEマーク表示は誰でも貼れますか?
-
誰でも貼れるわけではありません。PSEマークを表示できるのは届出事業者のみです。また届出事業者であっても、自主検査を含む所要の義務をすべて履行した上でなければ表示できません。
- 自主検査は「基準適合確認」と何が違いますか?
-
大まかに整理すると以下の通りです。
- 基準適合確認:製品が技術基準に適合しているかを確認する工程(設計・製造段階)
- 自主検査:定められた検査方式で実際に検査を行い、記録を残す運用上の義務
どちらも省略できませんが、「適合させる前提の確認」と「定められた方式で検査して記録する」は別の工程として整理されています。
- 販売だけ(製造・輸入しない)でも自主検査は必要ですか?
-
製造・輸入を行わず販売のみの場合、自主検査の義務は発生しません。ただし、販売する製品にPSEマークが正しく表示されているかを確認する責任はあります。自社ブランドでOEM販売する場合は輸入事業者に該当するため、届出・自主検査ともに必要です。
PSE自主検査で確認したいチェックポイント
自主検査の対応で確認すべきポイントをまとめました。社内のチェックリストとして活用してください。
□ 自社製品の電気用品名を特定済み(特定/特定以外の判定完了)
□ 施行規則 別表第三で該当品目の検査方式を確認済み
□ 必要な検査機器・環境が整っている(または工場への指示書を作成済み)
□ 検査記録の必須6項目を含むテンプレートを作成済み
□ 検査記録の保存場所・アクセス権・バックアップ体制を整備済み
□ 3年間の保存期限管理ルールを社内で共有済み
□ PSEマーク表示前に自主検査記録が揃っていることを確認済み
一つでも未対応の項目があれば、販売前に対応を完了させてください。自主検査の不備は、後から発覚すると販売停止・回収のリスクにもつながります。
「どこから手をつければいいかわからない」という場合は、現状をまとめた上で代行業者に相談するのが最短ルートです。

何を確認すべきか分からない段階でも大丈夫です。
製品確認から必要書類、工場とのやり取りまで、分かりやすくご案内します。

