STEP②PSEマーク取得で最も重要な「基準適合確認」とは?届出だけでは足りない理由

PSEマーク取得で最も重要な基準適合確認とは何かを示し、届出だけでは足りない理由を解説する黄色ベースのアイキャッチ画像

「経産省への事業届出は済んだ」
「工場からテストレポートももらった」
「PSEマークの表示準備もできている」

それでも、本当にそのまま販売して大丈夫なのか不安に感じていませんか。

PSE対応で重要なのは、書類を集めることではありません。製品が日本の技術基準に適合しているかを、事業者自身の責任で確認する基準適合確認です。ここを曖昧にしたまま販売すると、販売停止、追加試験、改善報告、回収対応など、事業継続に直結する問題へ発展する可能性があります。

特に、海外工場から渡されたIECレポートやCBレポートがあっても、日本独自差異であるJPND、重要部品リスト、現物との一致確認が不十分であれば、PSE対応として不完全なケースもあります。また、国内メーカーであっても、自主検査や出荷検査は行っている一方で、設計・構造が現行の技術基準に適合している根拠資料が整理されていないケースは少なくありません。

わたしたち、日本PSEマーク取得代行センターは、丸形PSE認証に特化した取得代行業者として、これまで500件以上の支援実績があります。数多くの案件を通じて、どこで時間と費用がかかりやすいのか、どうすれば無駄を減らして進められるのかのナレッジを蓄積してきました。

この記事では、基準適合確認とは何か、実務で何を確認すべきか、別表第八と別表第十二の違い、CDFやJPNDの確認ポイントまで解説します。

この記事を読むことで、手元の資料がPSE対応の根拠として使えるのか、何が不足しているのかを整理できます。

結論として、PSE対応は「届出を出したか」ではなく、技術基準に適合していると説明できる根拠を持っているかが重要です。

こんな方にオススメ
  • 経産省への事業届出やPSEマーク表示だけで十分なのか不安な方
  • 工場から渡されたテストレポートが日本向けに有効か判断できない方
  • CBレポート、IECレポート、JIS、JPNDの違いが分からない方
  • 国内製造品・輸入品・OEM製品の基準適合確認を正しく進めたい方
  • 手元の技術資料や検査記録が、行政への説明資料として使えるか確認したい方
この記事を読むと・・・
  • PSE対応で最も重要な「基準適合確認」の意味が分かる
  • 事業届出・自主検査・PSE表示だけでは足りない理由が分かる
  • 別表第八と別表第十二の実務上の違いが理解できる
  • CDF、JPND、現物照合で確認すべきポイントが分かる
  • 自社のPSE資料に不足している部分を整理できる
目次

手続きを終えて満足している事業者への警鐘

役所への届出やテストレポートの保管だけで安心している事業者に対し、技術基準適合確認を本当に行ったかを問いかける漫画風の注意喚起画像

その「PSE対応」、実は薄氷の上を歩いていませんか?

多くの輸入・製造事業者が陥る最大の罠は、「役所のハンコをもらった」「書類が手元にある」からうちは100%安全だ、という盲信です。

しかし、電気用品安全法(PSE法)において、形式的な手続きをこなすことと、製品そのものの安全性を技術的に証明することは全くの別物です。中身の安全性の検証(エビデンスの精査)が抜け落ちた状態での販売は、いつでも行政処分によって会社が吹き飛びかねない、非常に危険な状態と言わざるを得ません。

書類を「持っている」と「適合確認した」の圧倒的なギャップ

海外の工場から「これがうちのPSEレポート(テストレポート)だ」と送られてきたPDFを、そのままパソコンのフォルダに保存しただけで満足していませんか?

法律が事業者に課しているのは、レポートの「保管」ではなく、その中身を読み解き、日本の法律に適合しているかを自ら判断する「技術基準適合確認」の義務です。書類の存在を確認しただけでは、法律上の義務を履行したことにはなりません。

本記事の目的:丸形PSEを対象とした「実務の How」を徹底解剖

本記事では、特に多くの事業者が扱う「特定電気用品以外の電気用品(丸形PSE)」であるリチウムイオンバッテリー、換気扇、LED照明などを例に挙げ、現場の実務レベルで「何をどうチェックしなければならないのか」を、専門家の視点から骨抜きになるまで徹底的に解説します。

実務アクション①:適用すべき「技術基準(別表)」の正しい特定

入り口を間違えれば、どれほど立派なレポートも「無関係な紙屑」になる

基準適合確認を進める上で、最初に行うべき最重要実務が、その製品に適用されるべき「技術基準(省令の別表)」を正しく特定することです。日本のPSE法では、製品の用途や構造によって品目定義が非常に細かく分かれています。この入り口の特定を一歩でも間違えると、いくら大金を出して取得したテストレポートであっても、法的には「全く無関係な製品の書類」とみなされ、すべてが無駄になってしまいます。

3つの製品で見る、要求事項の劇的な変化

同じ電気用品であっても、品目が変われば技術的にチェックすべきポイントは180度変わります。

  • リチウムイオンバッテリー: 電池セル単体のエネルギー密度や、過充電・過放電を防ぐ保護回路(IC)の挙動、衝撃に対する堅牢性が核心となります。
研究室で技術者がリチウムイオン電池セルやバッテリーパックを測定機器に接続し、グラフを確認しながら試験している実写風の画像
  • 換気扇: 長時間回り続けるモーターの絶縁性能、巻き線の温度上昇、および回転する羽根に指が触れないかといった物理的な安全構造(風道構造)が重視されます。
換気扇の保護ガードに対し、試験室で技術者が試験指を用いて、回転羽根に指が到達しないことを確認している実写風の画像
  • LED照明: 内部の電源駆動基板(調光回路など)から発生する固有の電磁波ノイズ(EMC)が周囲の家電や医療機器に悪影響を与えないか、という電磁波環境のクリアが極めて重要になります。
電波暗室の中でLED照明が点灯した状態で設置され、EMC試験用の測定機器やアンテナとともに配置されている実写風の画像

このように、製品の特性に合わせて国が定めた個別の別表(試験規格)を正しく見極めることが、実務の第一歩です。

そもそも「基準適合確認(試験)」では、製品の何をチェックしているのか?

事業者がテストレポートを精査する際、闇雲に数字を眺めても意味はありません。PSEが防ごうとしている「危険(感電・外傷・火災)」と「障害(電波障害)」を念頭に置くと、レポートが求めている内容がすっきりと理解できるようになります。具体的には、基準適合確認(検査)のチェック項目は大きく分けて以下の3つの塊に分類されます。

構造の確認(物理的危険・火災の防止)

製品の「物理的な作り」そのものに欠陥がないかをチェックします。

ここでは、製品をわざと10度傾けても倒れないかを確認する「10度傾斜試験」のような泥臭い物理試験も行われます。万が一、子供の手が触れた拍子に製品が転倒し、外傷を負わせたり、内部ショートによる火災を引き起こしたりしないかを徹底的に検証するのです。

また、内部の配線が可動部に挟まれて擦り切れないか、万が一内部の部品が異常発熱した際に、外装のプラスチックから火が広がらないような「難燃性材料」が使われているかといった、物理的な安全仕様が厳しく見られます。

電気的な確認(感電・ショート・発火の防止)

目に見えない「電気の通り道」が安全にコントロールされているかをチェックします。

実務においては、製品のコア部品であるトランス(変圧器)などを実際にバラバラに解体し、内部のドロドロした巻き線の隙間や基板上の部品間の隙間(絶縁距離・沿面距離)を1ミリ、0.1ミリ単位で計測するという、極めて過酷な構造解析が行われます。

さらに、定格電圧をかけ、最大負荷の状態で何時間も稼働させ続けて部品の温度を測る「温度上昇試験」や、内部の部品をわざと1箇所ショート・破損(オープン)させて、安全装置が働いて火災を起こさずにシャットダウンできるかを検証する「異常試験(疑似故障試験)」など、製品を極限まで痛めつける試験データがレポートには並びます。

電磁波の確認(周囲への電波障害の防止:EMC試験)

製品自体が壊れなくても、「周囲に迷惑をかけないか」をチェックします(いわゆるEMC試験)。

これには、周囲に不要なノイズを撒き散らさないかを見る「EMI(エミッション/妨害電波の測定)」と、逆に周囲から強い電波ノイズを浴びても製品が誤作動を起こして暴走しないかを見る「EMS(イミュニティ/電磁界耐性)」の2つの側面があります。

特に「LED照明」は、内部の調光回路や交流を直流に換える回路から非常に激しいノイズが発生しやすい製品です。そのため、電磁波を完全に遮断した「電波暗室」と呼ばれる特殊な部屋で測定された、電源線を伝うノイズ(雑音端子電圧)や空間に放射されるノイズ(放射雑音)のデータが合格基準に収まっているかを確認することが、実務上極めて重要になります。

実務アクション②:「CDF(重要部品リスト)」と現物の分解照合

分解した電気製品の部品を机上に並べ、担当者がCDF(重要部品リスト)を確認しながら、モーターや基板などの型番・仕様を現物照合している実写風の画像

適用する規格と試験の全体像が分かったところで、次に行うのが最も泥臭く、かつ最も違反が見つかりやすい「現物照合実務」です。ここで登場するのが「CDF(Construction Data Form:重要部品リスト)」です。

CDFとは「製品の遺伝子情報の記録」である

CDFとは、その製品の安全性(火災や感電の防止)を担保する上で、決して勝手に変更してはならない「コア部品」の型番、メーカー名、定格仕様、およびそれらが取得している安全認証(UL、VDE、あるいはPSEなど)を一覧にまとめた、いわば製品の遺伝子情報の記録です。

換気扇であれば内部の「モーター」や「コンデンサ」、LED照明やバッテリーであれば「制御基板」や「保護回路のIC」「トランス」などがこれに該当します。

工場の「サイレントチェンジ(無断部品変更)」がもたらす本当の恐怖

海外、特に製造工場では、予告なく内部の基板や重要部品を変更することが日常茶飯事です。工場側からすれば、「ちょっと性能の良いトランスに変えた」「少し安いコンデンサが手に入ったから良かれと思って変えた」という、悪気のないコストダウンや仕様変更(サイレントチェンジ)かもしれません。

しかし、PSE法の世界においては、CDFに記載されている「トランスA」を、勝手に「トランスB」に変えた瞬間、その製品は法律上、テストレポートで安全を証明した製品とは「全く別の電気用品(=欠陥品)」になってしまいます。

部品が1つ変わるだけで、基板上の絶縁距離は再計算になり、回路の引き直し、最悪の場合は外装プラスチックの金型(プレス型)からすべて作り直しになります。つまり、構造の確認、電気の確認、電磁波の確認といったすべてのヘビーな試験を、もう一度最初からやり直さなければならないという、致命的なリスク(膨大なコストと時間)を背負うことになるのです。

輸入者がみずから製品を「分解」して1つずつ印字を照合する泥臭い実務

「海外のメーカーが『PSE対応済みだから大丈夫だ』と言っていた」

「大手の検査機関のロゴが入った表紙のレポートを貰った」

これらはすべて、法的な免責理由にはなりません。

輸入・販売事業者は、手元にあるCDFを1ページずつ開きながら、実際に量産され、日本に届いた製品を自らの手でドライバーを使って分解し、基板上の部品に印字されている型番やメーカーのロゴが、CDFの記載と100%一致しているかを一つずつ肉眼で照合しなければなりません。これが「基準適合確認」の実務における最大の核心です。現物の中身が1つでも違っていれば、そのレポートは目の前にある製品の安全性を何一つ証明していない、ただの紙屑となります。

PSE実務の最大の分かれ道:「別表第八」と「別表第十二」の決定的な違い

PSE実務における別表第八と別表第十二の違いを、1項基準と2項基準、国内独自基準と国際規格整合基準、適したケースやメリット・デメリットの観点から比較した図解

基準適合確認を進める上で、事業者をもっとも悩ませ、かつ実務の成否を分けるのが「どの省令(技術基準)を採用するか」という問題です。日本の電気用品安全法には、大きく分けて昔からある別表第八(1項基準)と、国際規格に合わせた別表第十二(2項基準)」という、成りなりも思想も全く異なる2つのルートが存在します。

世間の安易な解説では「輸入ビジネスなら別表第十二一択」などと言われがちですが、実務の現場を知るプロの間では、むしろ「別表第八こそが、どんな泥沼の状況でも対応できる万能の基準である」というのが常識です。その理由を深く掘り下げてみましょう。

別表第八(1項基準)とは?:昔からある、実は最強の「万能セーフティネット」

別表第八は、日本が古くから独自に培ってきた安全思想に基づき、国内の電力事情や住環境に合わせて作られた、いわば「ガラパゴスでありながら非常に完成された日本独自の基準」です。

回路の設計や物理的な「距離」、材料の「厚み」など、構造に関する具体的な数値規定が非常に細かいのが特徴です。「ここの絶縁物の厚みは何ミリ以上でなければならない」「配線はこう固定しなければならない」といった、仕様そのものをガチガチに縛るアプローチ(仕様規定)を取ります。

一見すると古くて頭の固いルールに見えますが、実務上、これほど心強いものはありません。なぜなら、仕様がガチガチに決まっているということは、「海外工場のテストレポートが1ページもなくても、目の前にある現物の寸法や材質を測るだけで、日本の基準に適合しているかを100%判定できる」からです。昔からある基準のため、国内の検査機関や技術コンサルタントにも完璧にノウハウが蓄積されており、どのような製品であっても力技で適合確認を完結させられる「万能性」を秘めています。

別表第十二(2項基準)とは?:海外レポートありきの「条件付きルート」

別表第十二は、国際電気標準会議が定めた「国際規格(IEC規格)」をベースに、日本国内の最低限の要求事項を付け足した基準です。「結果として安全であれば、構造のプロセスはある程度柔軟でよい」という性能規定の思想がベースにあります。

海外製造のデジタル機器や家電を輸入する場合、実務上はこの「別表第十二」を選択するのが教科書通りのルートとなります。海外メーカーがすでに取得している国際的な認証データを活かせるため、スムーズにいけばコストと時間を大幅に抑えられるというメリットがあります。

別表第八と別表第十二のクイック比較

比較項目別表第八(昔からある1項基準)別表第十二(国際ベースの2項基準)
思想のベース日本独自の伝統的な安全仕様規定国際規格(IEC規格)の性能規定
適合確認の条件現物さえあれば可能(レポートなしでも通せる)海外の完璧なレポートが必須(なければ頓挫する)
海外レポートの流用不可能(日本の基準でゼロから現物測定・試験)可能(ただし日本独自差異の網羅が条件)
実務上の位置づけどんな状況でも対応できる「万能ルート」条件が整った時だけ使える「効率ルート」

「別表第十二で対応できない」が多発する理由と、なぜ別表第八が万能なのか

その実務において、「最初は別表第十二で進めようとしたものの、途中で進まなくなる」というトラブルは少なくありません。

その理由は、別表第十二が、基本的に対応するJIS規格、いわゆるJ番号が存在し、その規格に基づいて適合確認できることを前提としたルートだからです。

別表第十二は、IECなどの国際規格と整合したJIS規格をベースに評価するルートです。そのため、対象製品について別表第十二上の対応規格、つまり該当するJ番号が確認できる場合には、国際規格ベースのレポートやCBレポートなどを活用しながら、効率的に基準適合確認を進められる可能性があります。

しかし、問題はここです。

対象製品に対応するJ番号が別表第十二に存在しない場合、その製品は別表第十二ルートでは評価できません。

この場合、どれだけ海外メーカーがIECレポートを持っていても、どれだけ「海外では販売実績があります」と説明しても、日本のPSE実務上は、別表第十二だけで基準適合確認を完結させることはできません。

そのため、別表第十二に該当するJ番号がない製品については、別表第八で評価するしかありません。

ここで活きてくるのが、昔からある「別表第八」の万能性です。

別表第十二で行き詰まったとき、プロのコンサルタントは即座に「別表第八へのルート変更」を提案します。海外メーカーが非協力的で書類が出なくても、JPNDのデータがなくても関係ありません。日本国内の検査機関に製品現物を持ち込み、別表第八の日本のルールに則って寸法や難燃性、絶縁耐圧を「現物測定・試験」してしまえば、海外メーカーを一切頼ることなく、国内だけで合法的なPSE対応を完結させることができるのです。

別表第十二という「借り物の書類」で対応できない網の目を、昔からある「別表第八」という確固たる日本の防衛線ですべて救い上げる。この2つのルートを製品の状況に合わせて自在に使い分けられてこそ、本当のPSE実務と言えます。

実務アクション③:適合の「技術的判断」とエビデンスの保管、そして「校正」の壁

菱形PSE認証パーツの適合性証明書をクリップボードに載せ、周囲に電源コード、プラグ、スイッチ、ヒューズ、端子台などの電気部品を配置した実写風画像

事業者が下すべき「技術的判断」の重み

現物照合を終え、JPNDの網羅性を確認したら、最終的に事業者が「この製品はすべての項目において日本の技術基準をクリアしている」という技術的判断を下します。レポートの表紙にある「PASS」という文字をただ眺めるのではなく、記載されている各試験の数値やグラフが、日本の法律の要求値の中にしっかりと収まっているかを自らの目で検証・判断すること。これが適合確認(法第8条第1項)を「完了」させるということです。

揃えておくべきエビデンス(マスターデータ)一式

適合の判断を下したのち、その根拠となった以下の書類一式を、型式区分ごとに整理して手元にいつでも提出できる状態で保管しなければなりません。

  1. 技術基準への適合を証明するテストレポート全文
  2. 重要部品リスト(CDF)および各重要部品の安全認証書(菱形PSE認証パーツの適合性証明書
  3. 製品の構造図、外観図、電気回路図、基板のパターン図(配線図)
  4. 定格表示(ラベル)のレイアウト図および日本語の取扱説明書(安全上の注意書き)

丸形PSEにおける保管期間のリアルな実務

今回例に挙げたリチウムイオンバッテリー、換気扇、LED照明はいずれも「特定電気用品以外の電気用品(丸形PSE)」に該当します。

丸形PSEの場合、量産・出荷時の全数検査の記録を定めた法第8条第2項に基づく「自主検査記録(通電チェック台帳など)」の法定保存期間は3年間と定められています。一方、大元となる設計の安全証明であるテストレポート(8条1項の基準適合確認記録)自体には、法律上の明確な保管期限の数字は明記されていません。

しかし、経済産業局から「報告徴収(法第45条)」や「立入検査(法第46条)」を求められた際、このレポートを出せなければその瞬間に「基準適合確認義務違反」となります。そのため、実務上は「少なくとも製品を市場で販売している期間、および販売終了から数年間は常に3日以内に提出できる状態で保管しておくこと」が鉄則となります。

プロの視点:測定器の「校正(キャリブレーション)」という大前提

最後に、技術コンサルタントとして非常に重要な実務のポイントを指摘しておきます。それは、レポートに記載されている数値を測定した機器の「校正(キャリブレーション)」です。

どれほどレポートの見栄えが良く、数値が合格基準に収まっていたとしても、そのデータを測定した試験機やオシロスコープ、温度計測器自体が狂っていれば、そのデータには何の意味もありません。世の中には「ちょうど100V」「ちょうど1ミリ」を完璧に測れる測定器は存在せず、必ず経年変化で狂いが生じます。国や国際機関が認めた標準器に照らし合わせて測定器のズレを調整する「校正」が定期的に行われている検査機関のデータかどうかの見極めも、基準適合確認の隠れた、しかし極めて重要な実務なのです。

まとめ:事務手続きではない「技術適合」の重み

PSE対応において、書類を作成して提出するだけの事務代行と、テストレポート精査・CDF確認・JPND差分チェック・測定器の校正確認・現物照合まで行う技術基準適合確認の違いを比較した漫画風図解

書類を右から左へ流すだけの安い「事務代行業者」のリスク

世の中にある「格安のPSE届出代行業者」の中には、役所に出す事業届出(法第3条)の書類作成だけを請け負い、こうしたテストレポートの技術的精査、CDF(重要部品)の検証、JPND(日本独自差異)の差分チェック、さらには測定器の校正有無の確認には一切触れない業者が少なくありません。彼らは書類の「出し方」は知っていても、製品の「中身(技術)」を読み解くことはできないからです。

万が一の際、すべての法的責任を負うのは輸入者(あなた)である

しかし、万が一製品が市場でトラブルを起こしたとき、あるいは経済産業局の試買検査(抜き打ち検査)に引っかかってエビデンスの提出を求められたときに、「安全の確認を怠っていた」として販売停止や全品回収(リコール)の処分を受け、莫大なコストと社会的信用の失墜という全責任を負うのは、代行業者ではなく、輸入・販売事業者であるあなた自身です。

PSEの実務には、法律の知識だけでなく、回路、材料、環境、そして国際規格と国内基準の差分を読み解く「技術の目」が不可欠です。形だけの手続きで終わらせず、技術的な裏付けを持った本物の安全管理体制を構築することこそが、あなたのビジネスとブランドを長期的に守る唯一の方法です。

次の記事予告:その「基準適合確認」、プロに頼むといくらかかる?

基準適合確認として行うべき具体的なチェック内容や、別表8・別表12の使い分け、そしてCDFやJPNDの精査がいかにヘビーな実務であるか、ご理解いただけたでしょうか。

「よし、それなら自社でレポートを読み込んでみよう」と思われるかもしれません。しかし、実際に英語の数百ページに及ぶレポートを前にすると、「この数値は日本の基準を満たしているのか?」「この部品の認証書は有効なのか?」と、すぐに専門知識の壁にぶつかることになります。

次回、シリーズ最終回となる記事③では、「PSE認証取得代行の費用はいくら?依頼できる業務・業者選びまで実務目線で解説」として、最も気になる「費用の内訳(なぜ製品やJPND試験の有無でこれほど金額が変わるのか)」を開示します。さらに、単なる書類作成代行と、技術的な適合確認まで見られるパートナー(技術コンサル)の圧倒的な違い、および失敗しない業者の選び方を、実務目線でぶっちゃけます。

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